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四塩化炭素という名前を耳にしたことはあるでしょうか?炭素と塩素からなる有機化合物で、かつては消火剤や溶剤、殺虫剤などの工業製品に使われていました。しかし、四塩化炭素はオゾン層の破壊物質であるほか、人への毒性が高く肝臓や神経、腎臓などに与える影響が問題視され、日本では1995年末に生産・消費が全廃されました※1。
現在は原則として製造が禁止されており、試験研究や分析用など特別な用途でのみ製造が認められている程度ですが、土壌や地下水中に入った四塩化炭素は長い間残留する可能性があるといわれているため、環境中に存在していないとも言いきれません※2。そこでこの記事では、四塩化炭素の特徴や影響をはじめ、日本での対策、水道水との関係を解説します。
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四塩化炭素とは?

「四塩化炭素(CCl₄)」は別名「テトラクロロメタン」とも呼ばれる、無色透明で甘い匂いを持つ化合物です。不燃性ですが、ナトリウムやカリウム、マグネシウムなどの金属と爆発的に反応するほか、水で加水分解を起こして塩酸を生じるなどの特徴があります。
かつては
- 機械器具の洗浄剤
- 不燃性の溶剤
- 芳香族化合物の抽出用
- ドライクリーニング用
- 殺虫剤
- ワックス樹脂の製造
などに使われており、とても身近な物質でした。
その生産量は1989年の段階で57,530トン、輸入量が44,219トンを計上しており、1989年当時の日本での使用量は101,712トンと推計されているほどでした。しかし、オゾン層を破壊する環境への影響や、人体に様々な害を与える毒性の高さが判明し、現在では使用が全面的に制限されています。
現代社会においては四塩化炭素は基本的に使われていないとはいえ、まったく存在しないわけではありません。四塩化炭素は揮発性が高く、吸入や飲用、皮膚から簡単に吸収されてしまい人体に悪影響を及ぼす可能性があります。さらに、地下に浸透して地下水にまで達すると、数ヶ月から数年間残留するとも見積もられています※3。すでに規制されているとはいえ、まだ注意が必要な物質であるといえるでしょう。
四塩化炭素が使われる理由
四塩化炭素はかつて全世界で工業製品に使われており、その品目は消火剤から殺虫剤に至るまで多岐に渡るものでした。ここでは、なぜ四塩化炭素がそこまで幅広く使われていたのか、その理由を解説します。
工業溶剤としての役割

四塩化炭素は水には溶けませんがエタノールやエーテルなどの有機溶剤とは相互によく溶け合い、油脂類やグリースなどを溶かす能力が非常に優れています。さらに、プラスチックやゴム等を溶解または膨張させる働きもあります※4。そのため、かつては油汚れを落とすための洗浄剤や、塗装やコーティングの前準備として表面の油分を落とす脱脂剤などへの利用が一般的でした。
現在では身近に使う洗浄剤や脱脂剤については代替品が開発されており四塩化炭素が使われることはありませんが、ごく一部の化学プロセスでは依然として研究目的で使用されています。
化学原料としての用途

四塩化炭素は、フロンガス(クロロフルオロカーボン)の原料としても使われてきた歴史があります。フロンガスという言葉は、環境問題で耳にしたことがある人も少なくないでしょう。フロンガスは安定した物質で、人体への影響もないとされており、かつては冷蔵庫やエアコンの冷媒として多く使われていました※5。
しかし、フロンガス(クロロフルオロカーボン)など「特定フロン」と呼ばれるものがオゾン層破壊の原因となることが分かり、オゾン層を保護するために
- 1987年:オゾン層保護を目的とした国際的枠組みを定めた「オゾン層の保護のためのウィーン条約」
- 1989年:ウィーン条約に基づいてオゾン層破壊物質の生産・消費を規制する「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」
が発効されました※6。
このモントリオール議定書により、四塩化炭素の段階的な廃止が進められ、現在では環境保全の観点から、生産・輸入ともに厳しく規制されています。
実験・分析用途

規制が進んでいる現在では、日常生活で使用する商品に四塩化炭素が使われることはありませんが、試薬研究や分析用途など、まだ代替技術がない分野に限っては四塩化炭素の使用が認められています。しかし、吸入すると有害であり皮膚刺激や強い眼刺激もあるため、使用する際には十分な注意が必要とされており、厚生労働省は使用の際に
- 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
- 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
- 取扱い後はよく洗うこと。
- 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
- この製品を使用する時に、飲食又は喫煙をしないこと。
などを安全対策として行うよう注意喚起を行っています※7。
四塩化炭素は揮発性が高く毒性が強いことから、取り扱いの際には換気設備や防護具の着用が必須です。そのため、一般家庭やオフィスなどで見かけることはほとんどありません。
四塩化炭素の体への影響は?

全世界的に規制されていることからもわかる通り、四塩化炭素の毒性は非常に高く、人体に有害な影響をもたらします。そのため、特定の用途で使用する際にも十分な注意を必要とし、廃棄は専門の廃棄物処理業者に依頼しなければならないほどです。では、一体どんな影響を及ぼすのか具体的に見ていきましょう。
肝臓への悪影響
四塩化炭素は消化器や呼吸器からよく吸収されることがわかっています。皮膚からも吸収されますが、吸収率は呼吸器などと比較すると非常に低いため、吸入や摂取に特に注意すべきだといえるでしょう。吸収された四塩化炭素は脂肪組織に最も高濃度で、次に肝臓に高濃度で分布することがわかっています※8。
四塩化炭素は肝毒性が強く、吸入や摂取により肝細胞が破壊される可能性があります。慢性的な暴露にさらされると肝硬変や肝がんのリスクを高めるとされており、健康に重篤な影響を及ぼす恐れがあります。さらに、四塩化炭素は一度体内に取り込まれると排出が難しく、長期的な健康被害に繋がる恐れもあります。
神経・腎臓への影響
吸入により中枢神経の働きが抑制され、めまいや頭痛、吐き気を引き起こすことがあるほか、高濃度の吸入では意識障害や昏睡状態に陥る危険性も指摘されています。腎臓にも負担をかけるため、長期的な暴露は多臓器へのダメージを引き起こす可能性があり大変危険です。
腎臓は血液中の老廃物を尿として排泄する重要な役割を担っているため、腎不全になると血液中に有害な物質が多くなったり、逆に必要な成分まで尿で排泄されてしまったりなどの影響が出ます。さらに末期の腎不全になると、透析療法や腎移植などの処置が必要になってしまいます。
吸入・飲用リスク
四塩化炭素は揮発性が高いため、通常の環境では大部分が気化して大気中に移動してしまいます。特に空気中濃度が高い環境ではすぐに吸収されてしまい、短時間で人体に影響が現れるといわれています。飲み水などに混入した場合、ごく微量でも人体に有害な影響を及ぼすため、安全な水道水の品質維持のために水道法で定められている「水質基準項目と基準値(51項目)」においても
- 四塩化炭素 0.002mg/L以下
と明確に基準が定められています※9。
四塩化炭素の日本の対策

前述したように、四塩化炭素は環境や人体に有害な影響を与えるため、全世界的に規制が進んでいる物質です。ここでは、日本における四塩化炭素対策についてご紹介します。
法規制の強化
日本では化学物質審査規制法や大気汚染防止法によって、四塩化炭素の使用と排出が厳しく管理されています。四塩化炭素の製造や輸入は原則禁止となっており、環境中への排出削減が義務付けられています。また、実験や分析などの目的で四塩化炭素を用いた時も、専門の廃棄業者によって厳重な廃棄を行わなければいけません。これらの法に違反した場合は、罰則も設けられています。
環境モニタリングと監視
日本の水道水は、厚生労働省の水質基準によって四塩化炭素の含有量が厳しく規制されています。水質基準値は「0.002mg/L以下」と定められていますが、現在はほとんどの自治体では検出限界未満となっているため、水道水に混入している危険性はそこまで気にする必要はないでしょう。水道法に基づく検査結果は一般公開されており住民が自由に閲覧できるため、気になる人はチェックしてみるとよいでしょう。また、地方自治体や環境省によって定期的に大気・水質の調査も行われています。
国際的な取り組み
1989年に発効されたモントリオール議定書のもと、世界的に四塩化炭素の生産と使用の制限が進められています。しかし、四塩化炭素は幅広い工業製品に使用されていたため、ただ使わなくなるだけでは日常的に使う生活用品に影響が出てしまいます。そこで日本も加盟国の一国として、代替物質の開発と環境負荷低減に取り組むほか、世界各国と協力しながら環境汚染の未然防止を目的とした研究開発を進めています。
四塩化炭素について正しく理解し、適切な情報を確認しましょう
四塩化炭素は、かつて溶剤や消火剤などに使用されていた化学物質ですが、オゾン層を破壊する性質や、人体に悪影響を及ぼすおそれがあることから、現在では製造・使用・排出が厳しく規制されています。
日本では、水道水に含まれる四塩化炭素について水質基準が定められており、水道事業者による水質検査や管理が行われています。そのため、通常の水道水について、過度に不安を感じる必要はありません。
ただし、四塩化炭素は過去に使用された場所などで、土壌や地下水に残留している可能性があります。水質への影響が気になる場合は、自治体や水道事業者が公表している水質検査結果を確認するなど、信頼できる情報に基づいて判断することが大切です。
四塩化炭素について正しい知識を身につけ、必要に応じて公的機関の情報を確認しながら、冷静に対応しましょう。
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福岡県福岡市在住。広告制作会社勤務の後、自ら制作会社を立ち上げ広告制作から記事執筆、ディレクションなど幅広い業務に携わる。食品をはじめ美容成分や化粧品、雑貨、建築など、各業界の専門家に取材しながら、紙やWEBなど様々な媒体でライティングを行い、年間100件以上の記事を執筆する。
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